環境負荷の軽減

環境管理の取組

当社は、「環境安全方針」において、「健康、環境そして地域社会への負の影響を回避、低減し、社会との信頼関係を維持します」と宣言しています。この宣言を達成するために、2018年度の重点目標として「環境管理の強化」を掲げ、全社的な環境管理の推進に取り組みました。

コーポレート環境管理計画

当社の各事業では、以前から事業の環境側面に応じたPDCAサイクルを回し、環境管理を実施していますが、2018年度には、各事業で実施している環境管理活動を整理し、全社的な環境管理を推進していくことを目的とした「コーポレート環境管理計画」を策定しました。

「コーポレート環境管理計画」では、「環境安全方針」の宣言、及び当社の環境に関する重要課題である「気候変動対応※1」「生物多様性の保全」「水資源の管理」に対処するために、5つのコーポレート環境目標を設定し、これらの環境目標の達成に向け、取り組んでいます。

  1. ※1気候変動対応に関する取組は、「気候変動対応」を参照
環境目標1 事業活動における低炭素化
環境目標2 環境汚染の防止
環境目標3 廃棄物の適正処分、リサイクルの推進
環境目標4 生物多様性の保全
環境目標5 水資源の有効利用

2019年度は、コーポレート環境管理計画の着実な実施、実施結果のレビュー、計画の見直しというPDCAサイクルを回すことにより、全社的な環境管理を推進します。

環境管理ワーキンググループ

当社の国内及び海外プロジェクトの環境マネージャー及び環境実務担当者で構成される「環境管理ワーキンググループ」を2018年4月、7月、10月及び2019年3月に開催しました。2018年度は、主に以下の事項について議論しました。

  • コーポレート環境目標及び環境KPIの設定検討
  • コーポレート環境管理計画の策定

なお、10月の会議は、当社の長岡鉱場と直江津LNG基地で開催し、国内プロジェクトの操業や環境管理の取組を海外プロジェクトの環境マネージャーと共有する機会を設けました。今後も、国内・海外における環境管理の良い取組の共有、並びに環境に関する課題を多面的に議論する機会を持ち、環境管理に関するノウハウの蓄積に努めます。

環境汚染の防止

当社では、現地国の環境に関する法規制を遵守することはもちろんのこと、各事業の環境側面から想定される環境リスクを特定・評価し、自主的な環境対策を講じ、対策の効果を監視・測定しています。このような事業ごとの環境管理の取組を実施することにより、環境汚染の防止に努めています。

環境法令の遵守

当社は、操業している各国の法令に基づいて事業活動を推進しています。国内外で事業を行う際は、当社の「HSE法的要求事項等管理要領」に基づき、当社事業が遵守しなければならない法的要求事項を一覧表に取りまとめ、遵守義務を明確化しています。国内プロジェクトでは、事業場ごとに法的要求事項の一覧表を策定し、毎年定期的に、法令の新規施行や改廃等を反映し、法的要求事項の遵守状況の確認を実施しています。また、2018年度には、HSE法的要求事項等管理に関する会合を複数回にわたり開催し、HSE法的要求事項の取組の現状把握と今後の対応について議論しました。なお、2018年度も環境法令違反は生じていません。

大気汚染の防止

当社では、大気汚染物質のうち、NOx、SOx、VOC(揮発性有機化合物)について国内外の各事業における大気への排出量を把握、管理し、これらの物質による大気汚染を低減させるべく、操業国の法令遵守はもちろんのこと、国際的な規制動向も注視しながら事業活動を推進しています。

国内プロジェクトでは、天然ガスの放散、原油貯蔵タンク、タンクローリー車及びタンカーによる出荷作業など発生源を特定し、排出量についてはPRTR法※2に従ってベンゼンなど化学物質ごとに国へ届け出ています。特にベンゼンについては、事業場の敷地境界においてモニタリングを実施し、周辺環境に影響のないことを確認しています。

2018年度の当社全体のVOC排出量は11,960トンであり、2017年度の排出量から約20倍増加しました。増加の原因は、イクシスLNGプロジェクトの生産開始による燃料使用量の大幅な増加及び生産開始時のフレア放散によるものです。また、2018年度のNOx排出量は4,045トンであり、2017年度に比べて1,367トン増加しました。SOx排出量は11トンとなり、2017年度から1トンの増加となりました。

  1. ※2PRTR法
    化学物質排出把握管理促進法(Pollutant Release and Transfer Register Law)

排水の管理

生産操業で発生する随伴水は、地下に還元圧入、又は排水処理後に排水基準を遵守していることを確認した後、河川・海等の公共用水域に放流しています。放流に当たっては、現地国の排水基準を遵守し、基準がない場合にはIFC EHSガイドライン※3の基準を適用しています。2018年度は総随伴水量約66万立方メートルのうち、67%を還元圧入し、残りを河川などへ放流しました。

イクシスLNGプロジェクトの海上生産施設では冷却水として、直江津LNG基地では気化器における熱交換のために、海水を利用しています。これらの海水は、取水温と排水温の温度差や残留塩素濃度等に関する操業国の法令やIFC EHSガイドラインの基準を満たした上で、海域に排水しています。

  1. ※3IFC EHSガイドライン
    国際金融公社(IFC:International Finance Corporation)から2007年4月に発行された、Environmental, Health, and Safety(EHS)に関するガイドライン

廃棄物の適正処分、リサイクルの推進

廃棄物の管理に当たり、発生抑制(リデュース)、再利用(リユース)、再資源化(リサイクル)という3Rを徹底することにより、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷をできるだけ低減させるよう努めています。当社の事業活動に伴って廃棄物が生じ、自社での再利用が難しい場合は、産業廃棄物処理の専門業者に委託し、適正に処理しています。海外プロジェクトでは、着工前に法的要求事項、リスク管理、監査の実施などを取り入れた廃棄物管理計画を作成した上で、廃棄物管理を行っています。国内プロジェクトでは、委託した廃棄物が適切に処理されていることを確認するため、年1回、委託業者施設の実地訪問を行い、廃棄物処理状況を定期的にモニタリングしています。

2018年度は、当社全体で約2,600トンの廃棄物が発生したものの、このうち約1,100トンがリサイクルされたことから、最終的な処分量は約1,500トンとなっています。

生物多様性の保全

当社の事業による生態系や生物多様性への影響の度合いは、事業のフェーズ、規模、及び立地環境により異なることから、求められる生物多様性保全も異なります。当社は、事業における生物多様性の「リスク」と「機会」を特定し、生物多様性保全に取り組んでいます。

また、当社は、IPIECA※4とIOGPの協働イニシアティブである生物多様性及び生態系サービス※5ワーキンググループに2014年から参加しており、生物多様性及び生態系サービスに関する業界の取組やグッドプラクティスを把握するよう努めています。

  1. ※4IPIECA
    国際的な石油・ガス業界のサステナビリティ推進団体
  2. ※5生態系サービス
    人類が生態系から得られる恵みのこと。例えば、淡水、木材、気候の調整、自然災害からの防護、土壌侵食の抑制、レクリエーションの場等が含まれる

海外における生物多様性保全の取組

新規開発となる海外プロジェクトでは、環境脆弱域(マングローブ、珊瑚礁、湿地等)や絶滅危惧種の重要な生息地への負の影響、外来生物種の侵入による生物多様性への負の影響等のリスクがあります。当社では、環境社会アセスメントにおいて、ミティゲーションヒエラルキー※6に基づき、負の影響の回避・低減・復元・代償策を策定し、実行しています。

イクシスLNGプロジェクトが立地するダーウィン湾の沿岸部には、マングローブ林が形成されており、魚類の繁殖エリアやウミガメの採餌エリアとなっています。イクシスLNGプロジェクトでは、この豊かな生物多様性を保全するため、ダーウィン湾における排水水質、海水水質、マングローブの生育状況、自然植生等の包括的なモニタリングを実施しています。また、北部準州によるジュゴンの生息調査に資金援助するなど、周辺の生物多様性保全にも貢献しています。

アバディLNGプロジェクトでは、今後、現地法制度、並びにIFCパフォーマンススタンダード※7に準じ、生物多様性や生態系サービスを含む環境社会アセスメントを実施します。

  1. ※6ミティゲーションヒエラルキー
    開発によって生じる生態系への影響を回避、最小化した上で、それでも残る影響を補償するために代替措置を講じるという優先順位
  2. ※7IFCパフォーマンススタンダード
    国際金融公社(International Finance Corporation)が定める環境と社会の持続可能性に関するパフォーマンス基準(IFC Performance Standards on Environmental and Social Sustainability)

国内における生物多様性保全の取組

長年にわたり操業している国内プロジェクトでは、事業活動における取組のほか、プロジェクト周辺の生物多様性保全に資する活動に積極的に関与しています。

直江津LNG基地では、事業活動における生物多様性保全の取組として、以下を実施しています。

  • 海水の取放水温度の常時監視
  • 冷排水の水質の常時監視

なお、直江津LNG基地では、これら対策の効果の確認、及び供用開始後の周辺海域の現況把握のために、2018年度に周辺海域においてプランクトン、底生生物、魚卵・稚仔、及び潮間帯生物の秋季と冬季の調査を実施しました。2019年度には、引き続き、春季と夏季の調査を実施します。

また、国内では、従業員の生物多様性に関する認識向上のために、以下の取組を実施しました。

  • 外部有識者による生物多様性に関する講義の開催
  • 環境かわら版による生物多様性に関する啓発活動

このほかに、国内では、周辺の生物多様性保全に資する活動に積極的に関与しています。主な取組として、長岡鉱場近傍の「キツネ平どんぐりの森」で春と秋の年2回、長岡鉱場が主体となって植樹活動を実施するとともに、地元の子どもたちを対象とした自然観察会を開催しています。また、新潟県の柏崎では、里山環境づくりネットワークを通じて、2005年から柏崎夢の森公園における里山環境整備事業に賛同し、森づくり活動及び希少植物保護活動に参加しています。さらに、直江津LNG基地では、上越市漁業協同組合主催の「桑取川魚の森活動」に参加しています。国内では、これら以外の事業場においても引き続き保全活動に積極的に関与していきます。

直江津LNG基地周辺海域での調査の様子①
直江津LNG基地周辺海域での調査の様子②
キツネ平どんぐりの森プロジェクトの参加者の集合写真

水資源の有効利用

水管理は当社における重要課題であるとの認識の下、プロジェクトによる水資源への影響を低減する取組を実施しています。また、当社は、2015年からIPIECAの水管理に関するワーキングループに参加し、水管理に関する国際的な動向や石油・天然ガス業界におけるグッドプラクティスを把握するよう努めています。

水ストレスの高い地域の特定

当社の操業地域が、水ストレス※8の高い地域に含まれていないかを確認しています。具体的には、WRI※9が開発した水リスクのマッピングツールである「AQUEDUCT」を用いて、当社のオペレータープロジェクトが立地する地域の水リスクを確認しています。2019年3月末時点で、水ストレスの高い地域での操業は行っていません。

  1. ※8水ストレス
    水需給に関する逼迫の程度を評価する指標であり、人口1人当たりの利用可能水資源量
  2. ※9世界資源研究所(World Resource Institute)

水の効率的な利用

国内プロジェクトでは、主に機器の冷却用として上水、工業用水及び地下水を使用しています。また、当社の発電事業や冬季の消雪散水用などにも地下水を使用します。冷却水は循環方式を採用し、また消雪散水設備にはセンサーによる自動発停装置を導入するなど、水使用量の削減に努めています。海外プロジェクトにおいては、イクシスLNGプロジェクトの試運転前検査の際、貯蔵タンクの耐圧テストに一度使用した水を、別の貯蔵タンクの耐圧テストに再利用するなど水使用量の削減に取り組んでいます。

水処理技術の検討

2015年度から2017年度にかけて、JOGMEC※10の支援の下、千代田化工建設、メタウォーターと共同で、「セラミック膜による随伴水処理技術の小規模実証試験」を秋田鉱場の外旭川プラントにおいて実施しました。このセラミック膜を用いた随伴水処理技術を確立させることにより、原油生産時の排水放流による環境負荷をより一層低減できることが期待されます。2018年度よりJOGMECと共同で事後調査研究を開始し、本技術の商業利用に向けた試験運転を実施しています。

  1. ※10JOGMEC(Japan Oil, Gas and Metals National Corporation)
    独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構