地域社会

基本的な考え方

当社は、事業活動を行う地域社会との信頼関係の構築は、ソーシャル・ライセンス・トゥ・オペレート(社会的操業許可)を保持するための基盤であると考え、オープンかつ透明性の高い対話を通じ、ステークホルダーとの信頼関係の構築、維持に努めています。

「INPEXグループ人権方針」では、事業活動を行う地域社会において、先住民を含む人々の人権を認識し、尊重するための当社のコミットメントを定めています。オーストラリアにおける先住民との関係構築については、「先住民社会との協調活動計画(RAP)※1」を策定し実行しています。

事業活動を行う上では、影響調査を行い、管理計画の実施により、地域社会に対する負の影響の最小限化に努めています。地域社会と当社双方にとっての価値を創造するCSV※2の考えの下、現地雇用の創出や能力開発、教育支援、環境保全など、社会価値創出に向けた取組を実施しています。

また、事業活動を通じて地域社会のために契約調達及び雇用の機会を創出すべく、オーストラリアでは、イクシスLNGプロジェクトにおける地元企業の採用を促すための「地元企業採用計画」の下、オーストラリアの企業に対し、公正、公平かつ十分な入札参加機会を提供しています。また、教育・研修機関と協働して地元の人材育成を実施しており、地域における雇用機会の創出を促しています。

当社は、事業を通じ社会の経済、社会発展に寄与し、グローバルな社会の一員として持続可能かつ繁栄する地域社会の構築に貢献します。

  1. ※1先住民社会との協調活動計画(RAP:Reconciliation Action Plan)
    Reconciliation Australia(先住民社会との協調促進を目的とする独立した専門機関)によって承認されたオーストラリアの先住民社会と協調していくための当社の取組を公式に定めたもの
  2. ※2Creating Shared Value
    経済的価値を創出しながら、社会的ニーズに対応することで社会的価値も創出するというマイケル・ポーター氏とマーク・クラマー氏が提唱したアプローチ

ステークホルダーとの関わり

当社の国内事業では、各事業場(新潟、南阿賀、長岡、柏崎、直江津、秋田、千葉)に地域社会の担当窓口を設置して操業地域のステークホルダーとの対話を実施しています。また、柏崎、千葉で開催されるマラソン大会の協賛やボランティア参加など、地域イベントに積極的に参加しているほか、新潟、長岡、柏崎、直江津、秋田の各地域で行われる夏祭りの花火打上げ協賛、長岡では地域住民の方々との年2回の森づくり活動を通じて環境保全への取組も行っています。当社のガスサプライチェーンの中核施設であり、イクシスLNGプロジェクトから出荷されたLNGを受け入れている直江津LNG基地では、地元の方々や市役所、官庁などに向けて2か月に1回ニュースレターを発行し、基地内での各種作業の様子や安全操業への取組などを紹介しています。また、地元で行われるソフトボール大会など、行事への参加を通して、地元の方々との交流を深めています。

インドネシアのアバディLNGプロジェクトでは、地元政府や関連機関と連携しながら、環境社会影響評価手続の一環として開催する公聴会(パブリックコンサルテーション)などを通じて、地域との積極的な対話を心掛けています。

オーストラリアにおいては、イクシスLNGプロジェクトの作業状況や現地雇用、調達契約機会について、地域社会との対話を心掛けています。2018年には、430回以上にわたり、面談や電話、Eメールを通じ、政府関連、ビジネス及び地元のステークホルダーとの対話を実施しました。また地元の住民に対しては、メディアや出版物を通じた情報提供を行いました。2018年は特に、イクシスLNGプロジェクトの生産開始及び今後40年にわたる操業期間における活動や、地域社会への影響及び地域にとってプラスとなる機会創出についての情報提供に力を入れました。また、ステークホルダーや地元関係者を招いた生産開始に伴う祝賀イベントをダーウィン、ブルーム、キャンベラ及びパースで実施し、これまでの当社に対する支援に感謝の意を表しました。

オペレータープロジェクトにおける地域社会との対話や貢献活動については、東京、パース、ジャカルタ、アブダビの担当者間の定期的な会議を通じ情報共有を行っています。

地域住民からの意見への対応

オーストラリアでは、フリーダイヤルやEメール、直接の対話を通じて寄せられた地域住民からの意見について記録管理を行い、タイムリーな対応を心掛けています。受け付けた意見については、関係者内で共有し、その傾向をモニターするとともに新たな懸念事項を早めに特定するように努めています。また、地域住民からの苦情については、苦情対応手順に従い、コントラクターやステークホルダーと協力して事実確認を行い、適切に対応しています。

2018年には、約1,560件の地域住民からの問い合わせや意見を受け付けました。雇用機会に関する問い合わせが最も多く、全体の約半分を占め、その他は主に契約機会やスポンサーシップに関する問い合わせでした。2018年には苦情の受け付けはありませんでした。

先住民との関わり

先住民社会との協調活動計画(RAP)

オーストラリアにおいては、当社の「先住民社会との協調活動計画(RAP)」に基づき、地域の先住民を尊重し、互いに有益で持続性のある信頼関係を築くための活動を心掛けています。「RAP」では、先住民との「関係」「尊重」「機会」の3つの重点テーマについて、当社の公約を設定しており、それら公約の実行については、RAP運営委員会がモニターを行い、達成状況を毎年ウェブサイト上で公表しています。

2018年の主な達成状況は以下のとおりです。

  • INPEXララキア・アドバイザリー・コミッティとの継続的な対話を通じ、今後40年にわたりララキアコミュニティを支援するための2,400万豪ドルのララキア貢献策を合意
  • 先住民文化の理解を深めるための各種社内イベントの実施
  • 西オーストラリア大学及びLarrakia Development Corporationを通じ、大学及びその他の高等教育機関で学ぶ先住民学生11名への奨学金提供

これまでの取組を継続し、更に強化するため、先住民の雇用及び地元企業からの調達に関する明確な目標を含む「INPEX 2019-2021 Stretch RAP」を策定しています。

雇用及び調達機会の創出

先住民の雇用は、当社の活動を通じ創出できる重要な機会の一つです。オーストラリアでは、Solid Pathwayプログラムを開始し、毎年10名分の先住民のポジションを特定することで先住民の直接雇用を促進します。このプログラムやその他の取組を通じ、36名もしくはINPEXオーストラリア全従業員の内3%の先住民雇用を目指します。加えて、イクシスLNGプロジェクトの操業に携わるコントラクターを通じ、2019年から2021年までの間、毎年平均60人の先住民を雇用することを目標とします。

加えて、当社及びコントラクターを通じた先住民企業との調達契約については、2019年から2021年までに50%増加させるとともに、100万豪ドル以上の調達を行うことを目標としています。

文化遺産の保護

オーストラリアにおいては、当社が事業活動を行う地域において、文化遺産を適切に保護するための文化遺産管理計画を策定しています。

また、ララキア族が伝統的に保有する土地や沿岸地域における文化遺産については、INPEXララキア・アドバイザリー・コミッティに相談しながら適切に保護しています。

イクシスLNGプロジェクトの陸上施設に隣接する「ヘリテージ・ヒル」には、ララキアの人々にとって文化的に重要な場所がいくつも含まれています。この土地をイクシスの操業期間及びそれ以降において保全するため、当社はララキアの企業であるLarrakia Development Corporationと契約を結び、この土地の継続的な保全を行うための取組を実施しています。加えて、この土地の重要性を更に強調するため、看板及び周囲を囲む柵を設置する予定です。

先住民ララキア族の支援
INPEXララキア・アドバイザリー・コミッティ

2018年11月、イクシスLNGプロジェクトでは、ララキア族との間で今後40年にわたり2,400万豪ドルの資金援助を行うことを合意しました。

この合意は、プロジェクトの陸上施設が位置する土地を伝統的に保有するララキア族がプロジェクトに果たした役割の重要性を認識するとともに、将来にわたる良好な関係維持の重要性を強調するものです。

プロジェクトからの資金は信託で管理され、様々な専門、経験を持つララキアの人々を中心に構成されるINPEXララキア・アドバイザリー・コミッティのアドバイスの下、ララキア族のための経済・教育・社会プログラムに対し給付されます。

イクシスLNGプロジェクトでは、この合意に先立ち、これまでにララキア族支援のため、大学生への奨学金や、子どもたちの通学のための助成金、高齢者や障がい者のためのエアコン設置の支援を行っています。

地域経済への貢献

当社は地元企業の採用や現地雇用を通じ、地域社会の経済発展に寄与できるよう努めています。

イクシスLNGプロジェクトでは、「地元企業採用計画(Industry Participation Plan: IPP)」を策定し、オーストラリア企業に対し、公正、公平かつ十分な入札参加機会を提供するための取組を行っています。当社のコントラクターにも地元企業の積極的な採用を促し、また北部準州の企業支援ネットワークを活用した地元企業の特定を行っています。これらの取組により、2012年から2018年半ばまでのイクシスLNGプロジェクトの建設期間中における契約調達の約半分をオーストラリア国内、4分の1を北部準州内から採用することができました。

加えて、イクシスLNGプロジェクトの建設期間中には、数多くの雇用機会が創出され、陸上施設建設のピーク時には、日々1万人以上の作業員が現場の建設作業に従事しました。また、地元の人材を育成するための研修も数多く実施し、建設期間中には、計6,100時間、47種類の研修コースに、434名のサブコントラクターの従業員が参加しました。

イクシスLNG プロジェクトにより成長する地元企業
Winnellie Hydraulicsの従業員

ダーウィンを拠点とする家族経営のWinnellie Hydraulicsは、石油ガス業界向けに自社サービスをシフトしたことにより成長した地元企業の一つです。

「イクシスLNGプロジェクトの建設が開始された2012年、資源業界にターゲットを向けることに成長の可能性を感じました。」と、同社のオーナーであるマックス・ニコルソンは言います。

マックスは、地元マーケットにギャップがあることを見いだし、資源業界に特化したサプライヤーになるための戦略的な経営変更を取り入れました。それ以来、同社では、イクシスLNGプロジェクトに関わる様々なビジネス向けに油圧機器の供給を行っており、現在では、その供給範囲はダーウィンにあるイクシスLNGプロジェクトの陸上施設のみならず海上施設にまでわたります。

「イクシスLNGプロジェクトの建設時に受注を獲得できたことで、大規模なプロジェクトに関わる上で必要なことを理解するだけでなく、長期にわたる機会を得るための競争力を養うことができました。また、需要に応えるため、地元の人材や機器を積極的に取り入れ地元に投資しています。それと同時に、世界中の製造元とも日常的にコンタクトをとりながらグローバルなビジネスの可能性も見据えています。」

Winnellie Hydraulicsでは業務拡大に伴い、従業員も倍に増やし、今では10名を雇うまでになっています。

地域社会への貢献

当社は、社会のニーズに応え、地域の社会経済発展を支援するために、社会貢献プログラムを実施しています。2018年は約16億円にのぼる社会貢献投資を行いました。特に次世代の教育・育成に力を入れており、2018年の当社の社会貢献投資額全体の36%を占めます。

オーストラリアにおいては、強く、活気に満ち、繁栄する地域社会の構築に貢献するため、人々の教育、福祉の支援及び地元企業の生産能力強化の支援に力を入れた社会貢献投資を行っています。2018年には、非営利団体とのパートナーシップやスポンサーシップを通じ70以上にわたるプログラムの支援を行いました。また、2012年以降、オーストラリアにおける社会貢献投資額は400万豪ドル以上にのぼります。

インドネシアのアバディLNGプロジェクトにおいては、「地域社会の活性化プログラム」の一環として、2011年からインドネシアマルク州タニンバル諸島の伝統織物である「イカット」文化の保護と普及促進を目的とした伝統織物生産訓練プログラムを実施しています。2017年にインドネシアの中央銀行Bank Indonesiaとの共同支援プログラムに移行し、2018年に地方政府の協力もあり、手織り機の作業場を新設し、ここを活動の拠点として制作技術のみならず、販売促進についてもアドバイスしています。

また、2014年からマルク州の選抜学生向けに、大学教育・調査研究のための奨学金を支給しています。本奨学金は2018年までに合計584人に、2019年は130人に対して実施しています。

アブダビでの社会貢献活動
アブダビの小学校での公文表彰式

当社のアブダビでの事業活動は、2015年の陸上油田権益取得、2017年の上部ザクム油田権益延長、そして2018年のサター油田・ウムアダルク油田権益延長及び下部ザクム油田権益取得により、新しいフェーズに入りました。今後40年にわたるUAE/アブダビとの長期的な協力関係を更に深化させるため、当社は同国が重要課題としている青少年教育を中心とした社会貢献活動に取り組んでいます。

2018年からSTEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics)教育の基礎となる算数計算能力を幼少期に身に付けることを目的として、公文教育研究会、アブダビ国営石油会社のご協力の下、アブダビの4つの小学校で公文式算数の導入を開始し、今後、対象学校を更に拡大していくことを目指しています。また、大学の夏休み期間を利用して、現地の学生を3週間日本に招き技術講座・文化体験・学生交流などをプログラムとした研修を、1993年から毎年継続して実施しているほか、柔道の普及と若手選手育成にも協力しています。